同窓会の皆様、こんにちは。法政大学中学高等学校・学校長の牛田でございます。
2009年もすでに半年が過ぎ、「折り返し地点」となりました。4月にスタートしました新年度も、はや3ヶ月が過ぎまして、間もなく「1学期」の終わりを迎えようとしておりますが、学校の近況などお伝えし、同窓会の皆様へのご挨拶に代えたいと存じます。
今年度は何と申しましても、移転・改革をスタートした2007年4月から2年が経過し、3年目を迎えたことです。一番の変化は、全て学年が男女共学となったことであります。女子生徒の存在がレアではなく、当たり前となりました。これはとても大きな変化です。学校は、その意味で、とても落ち着いてきたと思います。卒業生の皆さんには少し寂しいことかも知れませんが、「あの男子校が、男女共学になったんだ」という受止め方は一掃され、「法政大学中高は共学校」という印象が定着しました。来年、2010年3月には、初めての女子の卒業生が巣立っていくことにもなります。同窓会もこれから毎年、多数の女子同窓生を迎えることになりますので、よろしくお願いいたします。
その他、最近の話題といえば、何と言っても、「新型インフルエンザ」問題です。
新型は弱毒ながら要警戒 目には見えない厄介な奴
下手な歌を作ってみましたが、何せ、目に見えない〝敵〟ということもあり、たいへん苦心しております。高校生が感染する例が多く、中等教育の現場は振り回されっぱなしです。生徒の健康と安全を重視し、しばらくはお付き合いをしなければならないです。
最近の話題を詠んだ下手な歌をもう二首、紹介します。
百年に一度だけなら早く去れ 向こう百年 平和の世紀に
生誕は百年前の太宰さん メロスは走る 友情の証に
「百年に一度の不況」というフレーズは、もう何度聞いたでしょうか。最近、ほんの少し、底が見えてきたという印象もありますが、依然として、厳しい風が吹いています。
「百年に一度」というなら、「次は百年後まではない」ということにならないか。これは言葉遊びであって、「百年に一度」とは、そういうことではないことはわかっておりますが、願望としては、向こう百年間は平穏無事であって欲しいですね。そんな気持ちを歌ってみました。
それから、6月19日は「桜桃忌」でしたが、今年は、太宰治(1909~1948年)の生誕百年に当たり、ちょっとした太宰ブームが起きております。太宰は、1939年(昭和14年)~1948年(昭和23年)に玉川上水に入水自殺するまで、空襲を逃れるため、甲府や津軽に疎開した時期を除き、この三鷹に住んでいました。特に、結婚をし、子どもたちが生まれ、育った昭和10年代の三鷹時代は、太宰作品の中でも、最も健康的で明るいものが生み出された時期でした。「走れメロス」は、この時期の代表作の一つであり、中学の教科書にも必ず出ています。100年前に生まれた作家の作品が、いまも人々の心を捉え続けている、そこに私は、この文学作品の生命力を感じます。私たちの携わる教育活動もまた、そうした息の長い生命力に溢れたものでありたいと思うものです。
最後になりますが、母校に対する変わることのないご支援、ご協力をお願いするとともに、同窓生の皆様のご健康とご活躍を祈念し、挨拶といたします。
※ 本年4月6日の法政大学中学校における入学式式辞を添付します。
【2009年度法政大学中学校・入学式式辞】
本日、ここに、2009年度の法政大学中学校の入学式を迎えました。
式辞を述べるに先立ち、法政大学より増田壽男総長をはじめ、PTA会長ならびに役員、顧問の皆さま、同窓会会長ほか役員の皆さまには、ご多忙中にも関わらず、ご臨席賜り、厚く御礼申し上げます。ありがとうございます。
さて、140名の新入生の皆さん、入学、おめでとう。また、本日、ここにご臨席の保護者の皆さま、ご親戚の皆さまにおかれましては、お子様のご入学を心からお喜び申し上げます。
本校は、2007年4月にこの三鷹の地に移転し、男女共学化を含む大きな改革に動き出しました。その中心的な目標は、「確かな学力と人間力を育むこと」でした。私たちは、これを「学ぶ喜び」「誠実・礼儀」というフレーズに託してきました。
現代という時代は、まさに未曾有の危機の時代にあります。100年に一度といわれる経済不況が日本だけでなく世界で同時に起きています。未来への見通しが立てにくい、そんな時代です。
しかし、教育とは「国家百年の計」といわれるように、人づくりを通じて、これからの社会をつくる仕事です。私たちは、学校生活を通じて、生徒の皆さん、一人ひとりが、しっかりと自分と向き合い、一人ひとりのうちに、未来に向けての確かな夢と希望を育んで欲しいと願っております。
皆さんもお分かりと思いますが、建物を造ろうとするときには、土台がしっかりとしていなければなりません。「砂上の楼閣」などという言葉があります。土台がしっかりとしていないと、簡単に壊れてしまうことの云いであります。
学習、学力についても同じことが言えます。どんなにトレーニングを積んでも、しっかりとした基礎や土台がある人は伸びますが、それがない人はすぐに限界に突き当たってしまう。中学時代というのは、その土台を作る大切な時代です。はっきりと言って、この時代に確かな土台を築いておくことが極めて重要です。
高い建物を建てようとすれば、土台は広くしなければなりません。裾野は広いほどよいのです。
本校は、「総合的な基礎力」という七つの能力の育成を目標に掲げています。七つの能力には、文字通りの学力とともに、学力とは言い切れない創造性のような資質や感性、意欲というものも含んでいます。それが、「総合的な」ということを強調している所以です。これまでは入試の突破という目の前の目標がありましたから、よそ見をしている暇はなかったかも知れません。しかし、中学時代こそ、狭い世界に閉じこもることなく、視野を広げ、これまで数千年に亘り、先人たちが、営々と築き上げてきた知的財産、文化というものに目を見開いていって欲しいと願っています。優れたものはたくさん、世の中にあります。皆さんは、まだその魅力や奥行きの深さに十分気が付いていないだけなのです。
そんな中学時代に進めて欲しいことの一つとして、読書の大切さを強調しておきたいと思います。読書ということも、大切な人間としての裾野を広げるものです。
本年2009年は、太宰治の生誕百年にあたります。太宰は、青森県の津軽出身ですが、1939年(昭和14年)から亡くなるまで、一時、戦争で疎開した以外は、この三鷹に住んでいました。太宰の作品にはいろいろありますが、1939年に結婚をして三鷹に移り住んだ頃、とても健康的な明るい作品を生み出しました。代表作「走れメロス」も、この時期に描かれた作品です。既に読んだことのある人もあるでしょうか。
人を信じることのできない王様は、次々と人を殺していました。田舎に暮らすメロスは都に来て、そのただならぬ町の様子をけげんに思い、やがてその事実を知ります。まっすぐな心を持つメロスは、そんな王様に向って、三日間の猶予と引き換えに自分の命を差し出す覚悟だと約束をし、王様に挑戦をしました。三日の間に、村に帰り、妹の結婚式を挙げさせ、そして再び都に戻ります。その間に、親友セリヌンティウスを人質として差し出した。メロスは走り、途中で精も根も尽き果てながらも、何とか心を奮い立たせ、三日後の約束の時間である夕暮れぎりぎりに、走りに走り抜いてお城に辿り着きます。
すでに親友セリヌンティウスははりつけにされていたが、縄を解かれました。メロスは、彼に向かい、この三日の間に、一度だけ君を裏切ろうとしたと正直に述べ、頬を殴れと求めます。しかし、セリヌンティウスもまた、メロスを一度だけ疑ったと正直に述べ、頬を殴れと求めた。二人は殴りあい、そして抱き合った。そんな二人の友情に、王様も人を信じる心取り戻すというお話です。
友情、人を信じることのすばらしさ、勇気、正直さ、そういうものが、この作品のテーマです。
小説は、架空の話です。しかしながら、世に優れた小説といわれるものは、架空の話でありながら、人々の心をとらえ、感動や勇気を与え、時にその人の生き方にまで影響を与えます。優れた小説は、現実の世界を照らし出す真実を描いているからです。
さて、新入生の皆さん、ぜひ、この法政大学中学校で、読書に限らず、思い存分に勉強をし、スポーツにいそしみ、人間としての土台をしっかりと築いてほしいと思います。
以上を持ちまして、私の式辞といたします。
2009年4月6日
法政大学中学校
校長 牛田守彦


